夫婦という絆を失った泰三は、幼い頃から育った広い邸宅で孤独な生活を送っていた。彼の三人の娘たちもそれぞれ独立し、自分の人生を歩んでいた。年齢的な衰えや物忘れの増加に加えて、泰三には健康上の心配もあった。 ある日、泰三は転倒して腰を打ち、三女のマリが心配して駆けつけた。マリは泰三の面倒を見るだけでなく、彼と一緒に暮らそうと提案する。感謝の気持ちとマリの献身的な介護に触れた泰三は、その提案を受け入れることにした。 同居が始まってから一年後、泰三は夫婦生活や食事の準備、様々なことで自分が存在しないかのように振る舞うマリの様子に疑問を抱くようになる。本来なら新たな人生のスタートと思っていたはずなのに、なぜこんな風になったのか、違うはずだったのに、という思いが募っていく。 その頃、泰三の前に峯岸ゆうなという少し影のある若い女性が現れる。ゆうなは男と別れ、一人暮らしを始めたばかりだった。彼女との出会いは泰三の心を揺さぶり、新たなドアを開く可能性を秘めていたが…。